分解−部品外し
空けてビックリ。各3つあるペルチェ素子と空冷ファンの1つずつが停止
しかも、その位置が別々なので、実質1組の冷却ユニットががんばり、
残りの2組で、送風+加熱という悲惨な状態でした。
[ペルチェ素子とは]
ペルチェ素子は異種金属間に電流を流すことでジュール熱以外の
熱を発生させることができ、金属の片側が冷却、反対側の金属が
加熱する素子です。加熱した側の熱を交換(大気放出)できれば
クーラーとして、冷却した側の熱を交換できればヒーターとして
使えます。車のポータブル温冷蔵庫はこの原理を応用しているので
安価なのです。(でも消費電力はデカイ)
CR-3はホースを外し、ホース接続根元のプラスチックリングをねじって
取り外したあと、も裏側のビスを外せば簡単に分解できます。
ほこりまみれの中身
空気の通り道がない
真ん中のファンが止まってた
さらに分解を進めヒートシンクも取り外すと、ペルチェ素子とご対面。 放熱グリスは一応塗ってありました。
ヒートシンクを外す
ペルチェはTEC1-12706(6Aモデル)
ここで衝撃の事実が判明。なんとこのモデル、前作で冷えないと評判だった テトラクーラーCX-30の中身を3つ詰め込んだだけのモデルでした。 基板も3枚ですのでAC-DC変換も3系統に分かれているモデル。 設計に時間を掛けず熱交換容量をアップしたことになります。 故障率も3倍ということになります。
上下の基板が似ているな
同じユニットが3つ入ってた
ヒートシンクの形状
さてここから改造編です。
改造−完成
クーラーの改造から。ペルチェ素子単体は数オームの抵抗値ですが
1つは開放になっているのですぐに壊れているのが判明。
代替品を秋月電子で1枚購入600円でした。同じ型番ですので問題なしです。
資料を見たところ、ペルチェ素子は電流を流せば流すほど冷えますが
反対側の温度も高くなり、その熱拡散の効率が低いと冷却効果が低い
と記載されてました。それなら並列接続して1枚の印加電圧を下げて
電流も押さることで効率が稼げるとのこと。2枚重ねで熱も効率よく
下げられるとのことですが、エネルギー保存則によれば変わらないはず。
実際は1逆ピラミッド状(1段目:1枚、2段目:2枚・・・)に積むと
効率よく熱を伝播して大気拡散しやすくなるとのこと。これは正論
お金も掛けられないので、物は試しで2枚重ねをやってみました。
ヒートシンクのあった場所。グリスはアルコールで除去。
重ねて直列に接続
在庫関係で異なる熱量量の組み合わせ。
6A(ヒートシンク側)/8A(水槽パイプ側)
最後に各面にグリス塗布
回路を見ると、水槽パイプにもぐった負特性サーミスタは
各基板の電源制御回路につながっているだけで非常にいい加減
電源も3系統あり不効率(170W)ですので12V/3Aのスイッチング電源
に置き換え、マイコンで温度測定、ファンとペルチェの電源を制御
することにしました。
3系統で水温みてももったいないので、1つは抵抗値しらべがてら
抜き出し、機内温度の測定に充てました。
サーミスタも3個水槽パイプの位置に埋まっている。
抜くとグリスまみれ
抜くとグリスまみれ
抵抗値測定。室温で約10kオーム
ヒートシンクも90度回転。
穴はドリルとタガネで気合作成。
購入したシリコングリス
塗り塗りしてペルチェとヒートシンク取り付け
ここから電気回路の作成です。全体の制御はRenesas(旧NECエレクトロニクス)の
uPD78F0501Aで行いました。
サーミスタを10kオームで分圧し、脇の下の温度(笑)から適当に補正係数を出して、エクセルで温度テーブルを作成、正規化してます。
閾値決定したら、制御対象のGPIOでFETをON/OFFさせます。表示は30秒間隔1セットで水温1/水温2/外気温/クーラー動作/温度設定値を切り替え、ON/OFF制御は
ヒステリシスを持った温度閾値と比較して1分間隔でON/OFF更新させてます。(水温1、水温2でAND一致)
ペルチェ素子への電源は6Vまで降圧させています。周辺のレギュレータ電源含め、すべて電源IC専門メーカーのトレックスセミコンダクターで固めました。高性能で使いやすい電源ICのそろったメーカーです。
完成品のクーラー動作時電力ですがペルチェが大半を占め700mA(1次側換算)×3枚、ファン50mA×3、その他約20mAで約2.5A×12V=30W。
12VACアダプタの効率を70%で見ても約43W(CR-3カタログ定格170W)と省エネモデルになりました。
制御ブロック図
一番左の大きな基板が6V降圧DDC基板、その隣がファン電源制御基板
それぞれ3枚ずつつけました。ファン電源は電流制限機能付
中央の基板がマイコン基板、右に秋月LCD
外装の裏に1つのサーミスタを機内温度用に貼り付け
LCD表示パターン
実際の動作ですが、当初の予想通り、ペルチェ2枚重ねでも2倍の効果はでませんでした。
約45リットル相当の水槽で常に外気温-6度(外気33度なら27度)くらいを維持できたので。
ヨシとしておきます。
故障から完成まで約半年(途中3ヶ月くらい放置)となりました。
正面写真。ブルーのLCDが追加
側面写真。空気の通り道はのこぎりで大胆カット!
稼動状態。ちょっとコケあり(汗)。